ほっと一息
2023.03.22
資産管理の法律ガイド 民法等改正(令和3年)について その9
JA広報通信2月号
JA全中・JAまちづくり情報センター 顧問弁護士●草薙一郎
今回は管理不全土地建物の管理制度の創設について説明します。
所有者による適切な管理がされていない土地建物については、従来、その管理人を選任することは容易なことではありませんでしたが、そのような土地建物の存在は周囲に多大な迷惑をかけています。
そこで、今回、土地建物が適切に管理されていないとき、そのために他人の権利や利益が侵害されたり、その恐れがあったりするときは、利害関係人の申し立てにより、裁判所は管理人の選任をすることが可能となりました。
管理の対象は土地の場合、土地、その上の動産、管理人の得た金銭などであり、建物のときは建物、建物内の動産、敷地利用権です。
管理人は保存、利用、改良行為の他、裁判所の許可を得て、処分行為も可能ですが、所有者の同意を必要とします(動産の処分は所有者の同意は不要)。
管理人は前述の権限はありますが、その権限は所有者不明土地の管理人と違い、専属的でないため、対象土地建物に関しての訴訟の当事者は、管理人ではなく所有者になります。
管理人の管理行為の例としては、ひび割れや破損のある擁壁の補修、ごみの撤去、害虫の駆除などが挙げられています。
管理が不適切で居住されていない建物については、いわゆる空家特措法で、特定空家と認定されることによって、市町村長から管理の要請や建物の除去要請ができ、場合によっては行政代執行で、その要請行為を市長村が実施することもあります。
管理不適切な物件の周囲の方は、空家特措法も視野に入れながら、今回の民法改正を理解してください。次回は相続人不存在の改正を説明します。