ほっと一息

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2023.02.22

資産管理の法律ガイド 民法等改正(令和3年)について その8

JA広報通信1月号

JA全中・JAまちづくり情報センター 顧問弁護士●草薙一郎

 

 今回は所有者不明土地建物の管理制度の改正について説明します。

 土地建物の所有者を調査しても、その存在や所在が不明であるとき、その土地建物の管理処分が困難となります。現行法では不在者財産管理人とか、解散法人のときには清算人の選任などの方法があります。しかし、所有者の財産全ての管理を担当することになったり、何より所有者の特定ができないときには、不在者財産管理人の選任はできません。

 そこで、所有者を知ることができず、またはその所在を知ることができない土地建物について管理人を利害関係人の申し立てによって裁判所が選任することになりました。所有者が特定できないケース、例えば「〇〇外2名」というときの「外2名」が誰か分からなくても、この管理人の選任申し立てができます。

 選任された管理人は、土地、土地上の動産、売却等で得た金銭等、建物のときは建物およびその中の動産、敷地利用権について専属的な管理権を有しますが、それ以外の財産には権限は及びません。管理人は保存、利用、改良行為の他、裁判所の許可を得て、対象財産の処分(売却、取り壊し)ができます。今までの不在者財産管理人は、不在者の全ての財産を対象に、主にその管理を行うものでしたが、改正された所有者不明土地建物管理人は、対象財産は特定されるものの、専属的管理権を有し、処分も裁判所の許可があれば広く可能となりました(ただし、不在者財産管理人は遺産分割に加われますが、所有者不明土地建物管理人は加わることはできません)。

 なお、裁判所の許可を得て売却した金銭は供託をされることになります。土地も建物も所有者不明のときは別々の申し立てになりますが、管理人を1人とすることも可能です。また、地方公共団体の長もこの申し立てが可能です。

 

 次回は管理不全土地建物について説明します。