ほっと一息

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2023.02.16

介護ハンドブック 手作り料理にこだわらないで

JA広報通信1月号

介護者メンタルケア協会代表●橋中今日子

 

 介護の負担と聞くと、入浴やトイレ介助といった身体介護を思い浮かべる人が多いでしょう。ところが身体介護以上に介護者を追い詰めるのが「家事負担」です。特に大変なのが食事の準備です。

■ 介護食の準備は手間がかかる

 高齢者はかむ力や飲み込む力が弱まっているため、食材を軟らかめにするなど手間暇がかかります。また、栄養価は高いけれど使いにくい食材が増えることも介護者を悩ませます。意外かもしれませんが、高野豆腐やがんもなどは、口の中でバラバラになってむせやすいため、誤嚥(ごえん)につながる恐れがあります。私自身、身体障害のある母と高齢の祖母が食べやすい食材選びや調理に悩み、献立を決める、買い物をする、調理をするだけで、大げさではなく一日が終わってしまうこともありました。

 

 

■ 食べてもらえなければ意味がない

 以前の私は、健康のためには手作りの料理が一番良いと考えていました。ところが、仕事に介護にと追われ、食事作りが私を追い詰めていたのです。食べやすい軟らかさに調理したり、とろみを付ける手間暇に追われ、イライラ。時には家族を怒鳴ってしまうほど余裕を失いました。
 そんな中、手抜きだと後悔しながら買った総菜のコロッケを、祖母が喜んで食べている様子にハッとしました。いくら栄養価にこだわっても、食べてもらえなければ意味がないんだと気が付いたのです。その後、手作りにこだわるのをやめてスーパーの総菜を活用し、食事準備の負担を減らすことができました。疲れているとご飯を炊くことすら負担に感じます。パック詰めのご飯を常備しておくだけでも楽になります。最近では、味も栄養価も申し分ない冷凍食品や、宅配のミールキットの種類も豊富です。高齢者や持病のある人向けに、塩分やタンパク質を調整した食事を配達する会社も増えています。どう調べていいか分かからない場合は、病院やケアマネジャーに相談してみましょう。