ほっと一息

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2023.01.19

老人介護のミニ知識 衣服は思わぬ事故のもと

JA広報通信1月号

 高齢生活研究所所長 JA全農福祉用具アドバイザー●浜田きよ子

 

 

 Gさんは今年83歳になるおしゃれな女性。いつも薄化粧をして、身だしなみを整えています。

 そんなGさんは先日、階段で転びそうになって、怖い思いをしたと話してくれました。高齢者の転倒や転落は、骨折やねんざにつながり、それがもとで暮らしが変わる人も少なくありません。転ばぬ注意は何より大切です。

 Gさんが階段で怖い思いをした原因は、お気に入りのロングスカートでした。スカートが長いと、階段ではすそを踏み、バランスを崩してしまうこともあります。

 高齢者の衣服と事故は関係が深いのです。ロングスカートは転倒のもととなり、地味な上着は夜間、交通事故に遭いやすくなります。着物のようなゆったりした袖は調理中、着衣に引火する原因にもなります。

 スカート丈は、長過ぎない方がすそを踏みにくく、夜間に外出するときは、派手な色か反射シールなどを上着に張ると事故防止につながります。調理するときは、不燃や難燃繊維製のかっぽう着にしたり、アームカバーをすると、炎から身を守ることができます。

 

 衣服は快適な暮らしとも密接な関係があります。ゆったりとした袖つけの方が、脱ぎ着は楽ですし、ウエストのきついゴムは、肌を圧迫するだけでなく、排せつなどの場合に着脱が大変です。ゴムの伸縮性などにも注意が必要となります。

 そんなことをGさんに話したところ、彼女は「なるほど」と、いたく感心していました。これからはデザインだけでなく、そうした視点からも衣服を選ぶと、うなずきながら話してくれました。

 衣服は自分を表現する大切なものです。だからこそ、デザインにこだわりたい。しかし年を重ねれば、それ以外にも配慮しなければならないことがいろいろとあります。