ほっと一息
2023.01.14
ふるさと見てある記 風物詩・麦踏み
JA広報通信1月号
●とよた 時
懐かしい農村の風物詩に麦踏みがあります。秋まきの小麦、大麦などを冬の間、数回踏みつける作業です。木枯らしの吹きさらす畑で、農家の人たちが背中を丸めて畝を横になって踏みつけます。かつては農家の子どもたちもよく手伝わされたものでした。
これは株元や、周りの土などを踏み固めることで、霜柱で根が持ち上がるのを防ぎ、凍霜害を防止します。また茎や葉ばかりが成長すると、根の発育まで栄養が回りません。そこで麦を踏んで茎や葉に傷をつけてエチレンを生成し、越冬前に地上部がいたずらに伸びるのを防ぎ、分けつを促すのです。
麦を踏むと茎葉の成長は一時止まりますが、根の発育が良くなり苗が若い時期に地中深く張るため、寒さ、特に霜害に強くなるという効果があるのだそうです。
麦踏みの方法や回数は地域によって違いますが、普通は本葉3枚が開いたころに第1回目、幼穂形成後の節間伸長開始期のころ最終回になるよう、2回から数回行います。
麦踏みをすることで暖かい地方では、地上部の徒長防止と分けつ数を増やすのに役立つほか、寒い地方や火山灰質で霜柱が多く発生する地域では、耐寒性を高める効果があるといいます。
これを研究した農学博士の大谷義雄氏は、1943(昭和18)年から1948(昭和23)年までコツコツと麦踏みをしながら観察・研究し、効果を理論づけたということです。 今は人による麦踏みはほとんど行われなくなりました。しかし、トラクターを利用したローラーで、効果を上げています。
麦踏みは、俳句や美術のテーマにも取り上げられ、農民美術木版画家飯野農夫也の「麦踏み」は有名です。
幼な顔ときどきに上げ麦踏めり 夜半