ほっと一息
2023.01.05
資産管理の法律ガイド 民法等改正(令和3年)について その7
JA広報通信12月号
JA全中・JAまちづくり情報センター 顧問弁護士●草薙一郎
今回は共有物の分割についての改正の説明をします。
共有物は共有者間の協議で分割ができ、その分割方法や内容は共有者間の合意によりますが、分割協議ができないときには、裁判所に共有物分割の申し立てをします。現行民法でもこのことは明示されていますが、現行民法では現物分割と競売分割の明示しかありません。共有物を物理的に分けるか、競売手続きを利用して第三者に売却して金銭を取得するかという内容です。ただ、裁判例としては、共有者の持ち分を他の共有者が代金を支払って取得する(賠償分割)という方法も認められています。
今回の民法改正では、この賠償分割を明文化するとともに、裁判の場合の分割方法の順序の明確化を図っています。分割方法として、①現物を分割する方法②共有者に債務を負担させて他の共有者の持ち分の全部または一部を取得させる方法を原則とし、これらの方法で共有物の分割ができないとき、または分割によってその価額を著しく減少させる恐れがあるときは、競売手続きでの分割を裁判所は命じることができるとしています。
また、裁判所は当事者に対して金銭の支払い、物の引き渡し、登記義務の履行その他の給付を命じることができると規定しています。すなわち、共有者が他の共有者の持ち分を取得するときに、代金の支払いと持ち分の移転を命じることや、その命じるに当たって引き換え給付とする旨を裁判できることになりました。この共有物分割の裁判は、共有者間で協議が調わないとき、または協議することができないときに共有者が申し立てできるので、共有者が不明のときも利用できます。