ほっと一息

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2022.12.27

介護ハンドブック お悔やみの言葉かけに要注意

JA広報通信12月号

介護者メンタルケア協会代表●橋中今日子

 

 10年以上の介護の後、母のみとりを終えたBさん(会社員・女性・40代)のお話です。葬儀を終えて職場復帰した際、それほど親しくない人たちから次々と「お悔やみ申し上げます」「このたびはご愁傷さまでした」と言われ、漠然とした違和感がありました。特に、これまで関わりのなかった他部署の人に突然「心中お察しいたします」と言われたときには(私が介護していたことすら知らないはずなのに、何を察するというの?)、という怒りが湧いて、自分でも驚いたそうです。先方は、一般的なお悔やみの言葉を述べただけで、他意がないことは理解しているのですが、Bさんは納得できないモヤモヤとした気持ちを抱えています。

 

■ 型通りの弔意より、いつも通りのあいさつを

 声をかけた人たちは弔意を示すつもりだったのでしょうが、儀式ではない場所でのあいさつの第一声が「お悔やみ申し上げます」では、相手を驚かせてしまいます。いつも通り「おはようございます」とあいさつし、その後に「大変でしたね、落ち着きましたか?」といった言葉を加えれば気持ちは十分伝わります。
 Bさんも「私もこれまで、あいさつのようにお悔やみの言葉を言っていました。何も言わないのは失礼かなと思って……。声をかけてくださった人も、きっとそうだったのでしょうね」と振り返ります。

■ 相手を思う気持ちを表現しよう

 大切な人が亡くなった後は、誰もが悲しみや苦しみの気持ちを抱えています。本人のペースで、ゆっくりと向き合うことが年単位で必要なこともあります。「あなたがいつまでも悲しんでいると、故人が浮かばれませんよ」といった言葉はNGです。家族にしか分からない関係性に踏み込むことにもなりかねないので、絶対にやめましょう。
 お悔やみの言葉も励ましの言葉も、相手を思う気持ちがあってこそ届くものです。型通りの言葉の代わりに「今、相手はどんな様子だろうか?」と気にかけることから始めてみてください。