ほっと一息
2022.11.20
なくそう食品ロス 卵
JA広報通信11月号
食品ロス問題ジャーナリスト●井出留美
先日、テレビ番組のロケで視聴者宅に伺ったところ、「卵がたくさんあったから、全部ゆでて冷蔵庫に取っておいた」と話していました。生で置いておくより、ゆでた方が日持ちすると思っている人が多いようですが、ゆでてしまうと、リゾチームという菌を溶かす酵素の働きが失われてしまいます。生で保管した方が、日持ちがいいのです。10度以下で保管すれば、産卵から57日間、生で食べられるというデータもあります(日本卵業協会HPより)。生で食べる場合は、殻にひびが入っていないことを確かめましょう。
日本では、25度で保管した場合でも生で食べられる日数として「14日間」が賞味期限として採用され、年間通してこの日数の場合が多いです。パックしてから2週間です。でも、「生で食べる」のが前提ですから、多少日数を過ぎても、ゆでたり焼いたりすれば十分に食べることができます。
冷蔵庫のドアポケットの部分に卵を入れると、卵が揺れてしまいます。卵は揺らさない方がいいので、ドアポケットではなく、奥に入れるのがお勧め。殻にサルモネラ菌が付着している可能性がありますから、パックのまま、冷蔵室の奥に入れると良いでしょう。すき焼きをするときに、卵を丸ごと器に入れることがありますが、入れない方が良い、ということです。調理の途中で卵の殻に触った場合は、菌が付着している可能性があるので、手を洗ってから、次の作業に取りかかるようにしましょう。
鶏は、24時間以上かけて、ようやく一つの卵を産みます。スーパーでは卵は「特売品」という印象かもしれませんが、鶏が一生懸命産み出した卵を「生で食べる」前提で設定された賞味期限で捨ててしまうのは、もったいないです。鶏が産み出した、大切な卵。感謝の気持ちで最後まで食べ尽くしましょう。
食品ロス問題ジャーナリスト 井出 留美(いで るみ)
株式会社office3.11代表取締役。博士(栄養学/女子栄養大学大学院)修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。『食べものが足りない!』『SDGs時代の食べ方』『捨てないパン屋の挑戦』など著作多数。