ほっと一息
2022.11.09
資産管理の法律ガイド 民法等改正(令和3年)について その5
JA広報通信10月号
JA全中・JAまちづくり情報センター 顧問弁護士●草薙一郎
今回は共有物を共有者が使用している場合のルール改正について説明します。
無断で共有物を使用している共有者がいる場合、その使用を排除して他の共有者が使用することは、なかなか難しい問題です。
今回の民法改正では、こういうケースについての条文を設けています。共有物の形状や効用の著しい変更を伴わないものを含む共有物の管理事項は、各共有物の持ち分価格の過半数で決めますが、このことは、共有物を共有者が使用していても同様だとしています。つまり、共有物を使用している共有者がいても、共有者の持ち分の過半数で決定されれば、他の共有者に使用させることが可能となったのです。
ただし、配偶者居住権が成立しているときには、前記の過半数の決定をしても、配偶者居住権を消滅させることはできません。また、共有物を共有者の決定で第三者に短期で賃貸しているときも、共有者間の決定で第三者の短期の賃借権を喪失させることはできません。
さらに、前記の持ち分価格の過半数の決定があっても、共有物を使用する共有者に特別の影響があるときは、使用している共有者の承諾がないと、持ち分価格の過半数で決定しても効力は生じません。何が特別の影響かは明確ではありませんが、使用している共有者に受忍すべき程度を超えて不利益を与えるケースとされていて、居住建物として使用している共有者に対して、理由もなく別の共有者に使用させる決定をしたような場合が想定されます。
なお、共有物を使用する共有者は、自己の持ち分を超える使用の対価を他の共有者に償還する義務があるので、いわゆる使用料の支払いの問題が生じます。ただし、共有者間の合意で無償とすることもできます。
次回は、意見を言わない共有者や所在不明者への対応の説明をします。