ほっと一息

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2022.11.03

介護ハンドブック 公共の場で「認知症の方では?」と思ったときは

JA広報通信10月号

介護者メンタルケア協会代表●橋中今日子

 

 認知症の行方不明者は、年間約1万8000人にも上ります(警察庁「令和2年における行方不明者の状況」より)。うち200人弱は所在が分からないままです。認知症の方が行方不明になった、思いもよらぬ遠くまで行ったというニュースを聞くと、当てもなくふらふらと歩き続けるイメージがあるかもしれませんが、受け答えがはっきりしていたり、身なりが整っていたりと、意外と気付かれないことがあります。自分がどこにいるか分からないまま、宿泊できる場所を尋ねながら移動しているケースもあるのです。

 どこへ行くか答えられない女性

 会社員のAさんは、電車の中で、上品な高齢の女性に「この電車、次の駅で止まるのかしら?」と声をかけられました。普通電車と快速電車の乗り間違えをしているのかと思ったAさんが「どの駅で降りられるのですか?」と尋ねたところ「えっとね、次なの、すぐそこなのよ」と駅名を答えません。不思議に思ったAさんはさらに、「どこに行かれるのですか?」と目的地を確認したところ、女性は「えーっと、すぐそこなのよ」と、行き先も言おうとしません。もしかして認知症の方では? と直感的に感じたAさんは、このまま女性を1人にしてはいけないと考え「良かったら次の駅で降りて、駅員さんに確認してみませんか?」と声をかけて、次の駅で一緒に降りました。そして、ホームにいた駅員に事情を説明して対応をお願いしました。

 迷わずスタッフや警察へ連絡を

 Aさんの対応は100点満点です。もし、公共の場所で「もしかして認知症の方かもしれない!」と感じたときは、スタッフに声をかけて保護と対応を依頼するか、110番で「道に迷われている高齢の人がいらっしゃいます」と通報をしましょう。公共施設や交通機関のスタッフや警察官は、認知症の方への対応方法の講習を受けています。本当に、ただ道に迷っているだけの方だった場合でも、責められることはありません。