ほっと一息
2022.10.23
内臓脂肪を減らすために! 今日から 始める食習慣 and やめる食習慣
JA広報通信10月号
取材協力:一般社団法人 日本肥満症予防協会 http://himan.jp/
イラスト:服部新一郎
年齢とともに、なぜかおなか周りに付きやすくなる脂肪……。
肥満の中でも特に危険といわれている「内臓脂肪型肥満」について、
日本肥満症予防協会副理事長の宮崎滋先生にお話を伺いました。
肥満には「リンゴ型」と「洋梨型」があります
肥満には「内臓脂肪型肥満」と「皮下脂肪型肥満」の二つのタイプがあり、〈より危険〉とされているのが前者であるといわれています。内臓脂肪型肥満は「リンゴ型肥満」とも呼ばれ、内臓に脂肪が付くため、上腹部から盛り上がって見えるのが特徴です。それに対して「皮下脂肪型肥満」は「洋梨型肥満」とも呼ばれ、下半身に脂肪が付きやすいのが特徴。
一般に内臓脂肪型肥満は男性に多い傾向がありますが、更年期以降は女性も内臓脂肪が増えやすくなりますので、注意が必要です。
左は、おなかの内臓周りに脂肪が付く「内臓脂肪型(リンゴ型)肥満」、右は下半身に多く脂肪が付く「皮下脂肪型(洋梨型)肥満」。
「内臓脂肪型肥満」がより危険な理由
長い間、脂肪細胞の役割は「エネルギーの貯蔵庫」だけであると考えられていました。しかし近年、脂肪細胞からは動脈硬化に関係するアディポサイトカインという生理活性物質が分泌されていることが明らかになってきました。アディポサイトカインには善玉と悪玉があり、標準体形の人の脂肪細胞からは善玉が多く分泌され、傷ついた血管を修復しています。しかし内臓脂肪が蓄積すると善玉が減少し、動脈硬化の進行を加速させる悪玉が増加します。そのため、脳卒中や狭心症、心筋梗塞といった脳・心血管系疾患が一斉に進みやすくなるのです。
男性なら腹囲85cm以上、女性なら90cm以上だと内臓脂肪型肥満の可能性が高くなります。これに高血圧・高血糖・脂質異常のうち2つが該当すると、心血管系疾患を起こしやすい「メタボリックシンドローム」に。
内臓脂肪はたまりやすいけど落としやすい
日本人の死因で心血管系疾患はがんに次ぐ第2位。その始まりが内臓脂肪型肥満ですので、まず内臓脂肪型肥満を改善することが大切です。幸いにも内臓に付く脂肪細胞は活性が高いため、皮下脂肪よりも減らしやすいといわれています。脂肪の原料は、運動で消費し切れなかった糖質と脂質。ですから大切なのはまず運動量を増やすこと、そして糖質と脂質の摂取を控えることです。左ページで簡単にできる食生活改善のこつをご紹介します。
今日から、食生活を見直しましょう
始める!
1 タンパク質を増やす
「脂肪の燃焼機関」である筋肉は、タンパク質でできています。タンパク質が不足すると筋肉量が減少し、脂肪が燃焼しにくい体になりますので、肉や魚をしっかり食べましょう。その際、脂質を取り過ぎないよう牛肉なら赤身、豚肉ならヒレ肉、鶏肉なら胸肉やささ身がお薦めです。豆腐や納豆などの大豆製品や、乳製品、卵などはタンパク質も豊富で重要な栄養素も多く含まれ、脂質も少ないので、意識して取るようにしましょう。
2 糖質は食物繊維と一緒に取る
炭水化物は糖質と食物繊維でできていますが、食物繊維には糖の吸収を緩やかにし、脂肪の蓄積の原因となる血糖値の急上昇を抑える働きがあります。パンやお菓子など、食物繊維が少なく糖質が多い食べ物はできるだけ避け、食物繊維を多く取るように心がけましょう。例えば野菜を調理するときは食物繊維の多い皮をできるだけ残す、白いご飯よりも根菜の炊き込みご飯にする、野菜たっぷりの汁物を必ず付けるなどするようにしましょう。
3 青背魚を積極的に食べる
脂質はできれば減らしたいのですが、ある程度は体に必要ですので、選んで摂取することが大切です。霜降り肉やラード、バターなどの脂肪には動脈硬化を進める「飽和脂肪酸」が多く含まれていますので、注意が必要です。一方、イワシ、サバ、サンマなどの青背魚には、中性脂肪を下げる作用がある「不飽和脂肪酸」がたくさん含まれています。簡単な見分け方としては「冷蔵庫に入れて固まる脂肪は摂取量に注意」と覚えておきましょう。
やめる!
1 清涼飲料水を飲む習慣
飲み物に含まれる糖質は水分に溶け込んでいるため、体内に吸収されやすく、血糖値を急激に上昇させます。ヘルシーなイメージのあるスポーツ飲料も、運動によるエネルギーの枯渇を防ぐため多量のブドウ糖を含んでいますので、注意が必要です。水分補給には、糖が含まれていないお茶などがお薦め。緑茶などに含まれるカテキン成分は脂肪を燃焼させやすくしたり、吸収を抑えたりする効果があるといわれています。
2 夜遅い時間帯の食事
夕食は午後9時までには食べ終えるよう心がけ、夜食はできるだけ避けましょう。人間の体内には糖を脂肪に変える際に必要な酵素がありますが、その分泌量は昼の時間帯には少なく、午後10時~午前2時の分泌量は昼の20倍に増えるといわれています。そのため、午後9時以降に食事すると、同じものを食べても脂肪が作られやすくなるのです。また夜寝る前に食べたものは運動で消費されないため、脂肪が蓄積されやすくなります。
3 早食い、ドカ食い
満腹中枢にスイッチが入るのは、食べ始めてから20分経過後といわれています。そのため、早食いすると満腹と感じる前に食べ過ぎてしまい、結果的に食事量が多くなりがちに。「腹八分目」にとどめるのは難しいものですが、食事のときは一口食べるごとに箸を置き、20~30回はかむことを意識するといいでしょう。また、「残すのはもったいない」という気持ちも食べ過ぎの原因ですので、食べる量に見合った食事を作ることも大切です。