ほっと一息
2022.10.09
資産管理の法律ガイド 民法等改正(令和3年)について その4
JA広報通信9月号
JA全中・JAまちづくり情報センター 顧問弁護士●草薙一郎
今回から、共有物の利用促進や共有関係の解消に関する法改正を説明します。
現行法では、共有物の変更は共有者の全員の同意、共有物の使用方法などの管理については共有持ち分価格の過半数の同意、修理などの保存行為は各共有者単独で可能などが定められています。
しかし、少しの内容変更でも全員の同意が必要であったり、共有者の意思確認ができなかったりして、共有物の利用などにあっては、いろいろと支障が生じていました。
そこで、今回、①「管理」の範囲の拡大②共有物の使用のルール化③意思を表明しない共有者の扱い④所在不明の共有者への対応――などの法改正がなされました。
まず、①「管理」の範囲の拡大の点です。
共有物に変更を加える行為であっても、形状または効用の著しい変更を伴わないものは、共有者全員の同意ではなく、共有持ち分価格の過半数で決定することができるようになりました。
建物の外壁や屋上防水工事などは大修繕工事ですが、その形状や効用に著しい変更を伴わないことから、共有者全員の同意ではなく、共有持ち分価格の過半数で決定できることになります。
また、建物などを賃貸することは管理行為か処分行為かの議論がありましたが、今回の法改正で短期の賃借権の設定は共有持ち分価格の過半数でよいことになりました。
具体的には、樹木の植栽、伐採を目的とする山林賃借権(10年)、それ以外の土地の賃借権(5年)、建物の賃借権(3年)、動産の賃借権(6カ月)はかっこ内の期間を超えなければ、共有持ち分価格の過半数で決することができます。ただし、借地借家法の適用があるときは全員の同意が必要なので、ここの例としては、3年以内の定期建物賃貸借や一時使用目的の賃貸借が想定されます。
次回はこの続きの説明をします。