ほっと一息

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2022.10.03

介護ハンドブック 介護疲労を悪化させる思考パターンのわな

JA広報通信9月号

介護者メンタルケア協会代表●橋中今日子

 

 介護疲労は、実質的な介護負担だけではありません。「しっかりしなきゃ」「もっと頑張らなければ」といった過剰な責任感が疲労を悪化させることがあります。

 疲労の判断ができなくなる

 40代の会社員Bさんは、第2子の出産直後に母親が難病のALS(筋萎縮性側索硬化症)と診断されました。車で20分ほどの実家では、父親が介護サービスをフル活用しながら寝たきりの母親を支えています。Bさんも、仕事と子育ての合間を縫って、週末に実家に通って父親を手伝ってきました。
 ところがある日、Bさんは突然起き上がれなくなりました。食事も取れないほど衰弱し、医師に入院を勧められるほどです。Bさんは、会社員、母親、妻、娘といったさまざまな役割を「きちんと」「ちゃんと」やらなければならないとの思いが強く、疲れの限界を周りに相談できず、自分自身でも認められずに無理を続けてきたのでしょう。介護に限らず、仕事や子育てなどを「100%やり切らなければ責任を果たしたとはいえない」という思考パターンのわなに、自分ではなかなか気付くことができません。

 責任感の暴走にブレーキを

 Bさんには「ご実家のことはケアマネジャーやお父さまに任せて、ご自身の回復とお子さまやご主人との時間を優先してください」とアドバイスしました。助言を受け入れにくそうだったBさんでしたが、回復後に実家を訪れたとき、両親がBさんの顔を見ただけで喜んでくれたのを見て「もっと役に立たなければいけない、という思い込みが強かったのかも」と気が付いたそうです。
 介護負担そのものをすぐに解消するのは難しいものです。しかし、過剰な責任感を手放すと余裕が出て、他の選択肢を発見したり、周りの協力が得やすくなります。「頑張らなきゃ! と思ったときほど休息するタイミング」と意識してみてください。「頑張り過ぎているように見えるときは指摘してね!」と他人にお願いしておくのもいいですね。