ほっと一息
2022.09.06
介護ハンドブック 介護サービスの利用控えによる疲労
JA広報通信8月号
介護者メンタルケア協会代表●橋中今日子
コロナ禍が始まり、2年以上が経過し、新しい生活スタイルに慣れてきた方もおられるでしょう。しかし、介護者の場合、長期化したコロナ禍で気付かぬ負担が増していることがあります。
コロナ禍での疲労が蓄積
50代のKさんの事例です。コロナ禍直前に、20年以上介護してきた母と祖母を相次いでみとり、今は知的障害を持つ弟と生活をしています。今春には、頭痛や耳鳴りが続いて起床できなくなり、仕事にも差し障るようになりました。Kさんは「母や祖母を介護していた頃に比べれば楽なはずなのに、どうして……」と、途方に暮れてしまいました。
Kさんはコロナ禍により、オンラインの仕事が増え、自宅で過ごすことが多くなりました。そのため、弟の訪問介護を週5回から週2回に減らしていました。また、コロナ禍で当初は利用中止となっていたショートステイは1年前から受け入れを再開しましたが、利用時には新型コロナの陰性証明が必要です。障害を持つ弟は、安価な簡易検査法が使用できず、ショートステイを利用するには、主治医へ受診の上、1回2万円近い検査代が必要になるのです。手間と費用の負担から、この2年間は一度もショートステイを利用していません。ケアが必要な弟が家にいると仕事に集中できず、作業の途中で席を立つことも多いです。1人になれる時間や自由な時間が取れなかったことが、想像以上に心身の負担となっていたのでしょう。
疲れは自覚できない
Kさんのように、コロナ禍の影響でサービスの利用頻度を減らしたままのご家庭も少なくないでしょう。しかし、感染の不安と戦いながら過ごしてきたこの2年間で、疲労は確実に蓄積しています。今は問題が起きていないとしても、じわじわと心身に悪影響を与えているかもしれません。感染状況は完全に落ち着いたわけではありませんが、介護サービスの利用回数を戻すこともぜひ検討してください。