ほっと一息
2022.08.30
「薬食同源」で元気に 漢方な食生活のすすめ
JA広報通信8月号
監修:櫻井大典(漢方コンサルタント)
イラスト:林よしえ
病気というほどじゃないけれど、ちょっと調子が悪い……。
そんなときは、漢方を意識した食生活で不調を改善し、心身を整えてみませんか?
誰でも手軽に取り入れられる、漢方な食生活のこつをご紹介します。
病気になってから薬を飲むよりも毎日の薬食で「未病」を改善
「未病」という言葉を耳にしたことはありませんか? 「未病」とは、病気ではないけれども健康ともいえないという状態のこと。病気になってから治療するのではなく、病気になる前の「未病」の状態で改善して、健康を維持しようというのが、漢方の考え方です。漢方では「薬食同源」といって、私たちが普段食べている食品は全て、薬と同じように体を元気にする力があると考えられています。それぞれの食物の働きを知って、毎日の食事に積極的に取り入れましょう。
体を構成している「五臓」は五つの「味」の食品に養われています
漢方では、生命活動に必要な働きや機能を、「肝」「心」「脾(ひ)」「肺」「腎」の五つに分類しています(単に内臓器官だけではなく、より広い機能や概念を表しています)。そして全ての食材は、五臓を養っていると考えられているのです。不調を感じたときは、弱っている五臓を養う食品を積極的に摂取しましょう。五臓を養う食品は、「味」で分類する考え方と「色」で分類する考え方があります。どちらも覚えておくと、買い物をするときの食品選びに便利です。
弱っている「五臓」を元気にする5色・5味の食材
肝
血を貯蔵し、血流量をコントロールして、生理機能がスムーズに働くよう調節しています。
酸味
梨、グレープフルーツ、
レモン、梅、酢、
イチゴ、トマトなど
青
小豆、アスパラガス、レタス、キャベツ、
小松菜、ホウレンソウ、
ゴーヤー、ブロッコリー
など
心
血を隅々まで巡らせるポンプとして働き、精神や意識を安定させる作用もあります。
苦味
緑茶、ギンナン、
ミョウガ、ゴーヤーなど
赤
豚肉、レバー、マグロ、
カツオ、サケ、トマト、
赤ピーマン、ニンジン、
イチゴなど
脾
胃と共に消化吸収を担い、エネルギーである「気」や「血」のもとや潤いを作って、全身に送り出します。
甘味
小豆、米、芋、砂糖、
蜂蜜、バナナなど
黄
梨、栗、卵、
トウモロコシ、
カボチャ、ジャガイモ、
バナナ、ミカン、
ユズなど
肺
新鮮な空気を取り入れて全身に送る呼吸に似た働きの他、潤いや栄養分の運搬や分配も担っています。
辛味
シソ、ショウガ、ネギ、
ニンニク、こしょうなど
白
白身魚、レンコン、
ダイコン、ハクサイ、
カブ、ユリ根、白米、
牛乳、豆腐、白ごま
など
腎
人の成長や発育、生殖をコントロールし、ホルモンの分泌や、知能、知覚、運動系の発達と維持に働きかけます。
塩味
昆布、エビ、豚肉など
黒
ゴボウ、ワカメ、ヒジキ、のり、シイタケ、
黒米、こんにゃく、
黒ごま、黒酢など
こんな不調があるときは、この食材で養生しましょう
風邪気味で下痢っぽい
しそ茶で胃腸を活性化
漢方では、風邪のときに起こる下痢は、湿った風や湿気が「湿邪(しつじゃ)」となって体内に入ってくるのが原因と考えられています。対策は、体内の余分な水分を取り除きながら胃腸の調子を整えること。お薦めは、気の巡りを良くし、胃腸の調子を整える食材・シソです。赤シソの葉を細かく切って、お湯に入れて煮出した「しそ茶」にして飲むといいでしょう。発散作用のあるショウガを入れるのもお薦めです。
しつこいむくみ
小豆汁で体内の水分調整
小豆は利尿作用と解毒作用が高く、水分代謝を促すと考えられているので、小豆50gを1Lの水で15分から20分ほど煮出した「小豆汁」を飲むといいでしょう。
また中国医学では、胃腸の働きを担う脾・胃が体内の水分代謝を行っていると考えられています。そのため、脾・胃を助ける食材である米、ナッツ、ヤマノイモ、カボチャ、キャベツなどもお薦めです。
花粉症による目のかゆみ
きんぴらごぼうで胃腸を整える
漢方では花粉症の主な原因は、外敵から身を守るエネルギーの不足であり、肺や胃腸が弱っている人は症状が出やすく悪化しやすいと考えられています。目のかゆみなど炎症が起こっている場合は、胃腸を整えながら炎症を抑える力もあり、中国では古くから生薬として用いられているゴボウがお薦め。きんぴらもいいですが、細く切って天日干しにし、軽くいって煮出した「ごぼう茶」もいいでしょう。
イライラする
グレープフルーツで気の巡りを改善
怒っている人を絵で表現するのに、頭から湯気を出している様子を描きますよね。漢方でもイライラは「熱が火に変わった」状態とされ、気の不足や滞りが原因で起こると考えられています。気の巡りは肝によってコントロールされているため、まずは肝の熱を冷ますことが必要。そこで、気の巡りを良くするグレープフルーツジュースがお薦めです。ジュースにしないでそのまま食べてもOKです。
乾燥しやすい
甘酸っぱい食品で潤う
漢方では潤いは「陰」によって作られるとされており、「酸甘化陰(さんかんかいん)」といって、甘い物+酸っぱい物で「陰」を作ることで、潤いが得られると考えられています。そこで、甘味と酸味がある梨、酢豚、おかゆに梅干し、蜂蜜にレモンなどがお薦めです。また乾燥を気にして水分をたくさん取ってしまうと、胃腸が弱り、潤いを作り出す力も弱まってしまうため要注意。水分は食物から取るように心がけましょう。
頻尿・尿漏れに
むき栗で腎を強くする
漢方では、腎は生命力の源と考えられており、加齢によって腎が弱ると、尿を出して止める力が弱まるとされています。お薦めの食材は、腎を補養し、老人性の筋肉の衰えに効果があるとされているむき栗。ただし、栗そのものは薬になりますが、砂糖を加えて焼いた甘栗はNGです。最近は加糖されていないむき栗が売られていますが、栗の他にはクコの実、クルミ、松の実もお薦めです。