ほっと一息
2022.08.10
介護ハンドブック ささいなことで怒鳴ってしまう
JA広報通信7月号
介護者メンタルケア協会代表●橋中今日子
「イライラして優しくできない」という介護者からの相談はとても多いです。そして、多くの方が罪悪感で苦しんでいます。
イライラは疲れのサイン
40代の会社員Kさんの事例です。3年前にくも膜下出血で寝たきりになった母親を、仕事をしながら介護しています。最近、Kさんはささいなことでイライラし、これまでなんとも思わなかった介護が苦痛です。先日は歯磨きの介助中に「なんでこんなこともできないの!」と怒鳴り、母親に「そんなに怖い顔で怒らないで……」と泣かれて、ひどく落ち込みました。「明日は優しくしよう!」と決意するのに、またいら立ちが募って声を荒らげてしまう毎日です。Kさんは自分でも理由が分からず、途方に暮れてしまいました。
実は、このKさんとはかつての私のことです。怒鳴ってしまう自分を責め、「優しくしなければ!」と思えば思うほど、苦しくなっていました。そんなとき、心理学の先生から「怒鳴っちゃうのは疲れているからだよ」と指摘されたのです。
勇気を持って助けを求めて
私は現在も、うっかり頑張り過ぎて燃え尽きてしまい、家族に八つ当たりしたり、寝込んだりすることがあります。そうならないよう、友人に「様子がおかしいときは指摘して!」とお願いしているくらいです。それほど、介護者は自分の疲れを自覚できないものなのです。怒鳴ってしまうのは、自分のせいではありません。一番避けたいのは、孤立です。怒鳴ってしまったことを誰にも話せず、孤独感が増していきます。また、疲れやイライラを認めたくなくて「言うことを聞かないあいつが悪い!」と暴力や暴言を正当化してしまうときは、心身が限界を超えています。悲劇的な結果を生まないためにも、どうか勇気を持って「怒鳴ってしまう。優しくなれない」とケアマネジャーに伝えて助けを求めましょう。