ほっと一息

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2022.07.28

お米をおいしく楽しもう お米の味を「見える化」する

JA広報通信7月号

五ツ星お米マイスター●小池理雄

 

 今まで触れてきたお米の味について、今回はもう少し深掘りします。

 以前生産者と打ち合わせをしていたときのことです。「うちの米はおいしい。なぜなら甘くて粘るからな」と胸を張っておっしゃいました。しかし今どき、それだけでは消費者の購入意欲は湧きません。

 それは、今のお米はたいてい「甘くて粘る」からです。極端にパサパサであったり、硬過ぎてポロポロだったりするお米は意図的に探さない限りありません。つまりそれだけでは差別化につながらないのです。

 生産者が消費者に自分のお米の味を説明し、そして購入してもらうのであれば、もっと具体的に説明する必要があります。

 「甘さ」は例えば「舌の奥深くまで到達する、こくのある甘味」。「粘り」は例えば「口中にでんぷんの甘味を残していくほどの粘り」といったレベルです。ここまで具体的に表現すれば、お米の味が「見える化」でき、消費者の関心ががぜん高まるのです。

 ちなみに、こういった話になると「うちのお米は食べれば分かる」でまとめてしまう生産者もいらっしゃいます。しかし、今お米の消費減退局面においての一番の課題は「いかに手に取ってもらうか」です。そう、「食べる」以前の問題なのです。

 お米の味を具体的に示す方法として、こういった「具体的な表現」に加え「八つの切り口で評価」を行います。その切り口とは「見た目」「香り」「硬さ」「粘り」「うま味」「甘味」「食感」「喉越し」です。それぞれを5段階評価で採点します。

 

 

 お米の味は非常に淡泊です。だからこそ、このように切り口ごとに分けて味を評価すると、品種ごとの味の違いが浮き彫りになるのです。

 私のような業界の人間であればともかく、一般消費者が食事のたびにここまで真剣に味わう必要はありません。ただお米の味を見極めるには、こういった方法もあることを覚えておいてください。

 

 

 

五ツ星お米マイスター 小池 理雄(こいけ ただお)

小池精米店三代目店主。1971年東京・原宿生まれ。大学卒業後、出版社、人事制度コンサルティングファームなどを経て、2006年に小池精米店を継ぐ。それまでの社会経験を生かし、新しいお米屋さんのあり方を常に模索している。