ほっと一息
2022.06.19
資産管理の法律ガイド 民法等改正(令和3年)について その1
JA広報通信6月号
JA全中・JAまちづくり情報センター 顧問弁護士●草薙一郎
今回は相隣関係の見直しに関しての説明をします。
現行民法は境界またはその付近で障壁または建物を築造、修繕する場合、土地所有者は必要な範囲で隣地の使用を請求できる。ただし、建物内への立ち入りは隣人の承諾が必要と規定しています。
今回の改正は、これをもう少し詳しくしました。
改正法では、どういう場合に隣地の使用が認められるかが明示されました。
具体的には、
(1)境界またはその付近における障壁、建物その他の工作物の築造・収去・修繕の場合
(2)境界標の調査または境界に関する測量の場合
(3)越境した隣地の枝を切除できる場合(これについては後日、説明します)に隣地の使用を請求できることとなりました(住家への立ち入りは居住者の承諾が必要です)。
そして、使用に当たっては、使用の日時、場所、方法が隣地の所有者および使用者にとって損害が最も少ないものを選ぶ必要があります。また、使用に際しては、目的、日時、場所、方法を隣地の所有者および使用者に対して、事前に通知をする必要があります(あらかじめ通知することが困難なとき、例えば建物の外壁の落下の危険性があるとか、隣地の所有者の所在が不明のようなときは、使用開始後に遅滞なく通知すればいいことになります)。
もし、隣地の使用によって隣地所有者または使用者に損害が生じたときは、隣地所有者などは損害を請求することができることが明示されました(この点は、従前の条文でも請求可能でしたが、「隣人」が請求できると規定され、その「隣人」の定義が不明確でした)。なお、この改正は令和5(2023)年4月1日から施行されます。次回はライフラインの設置に関しての改正を説明します。