ほっと一息

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2022.07.12

介護ハンドブック どちらがいいの? 同居と別居

JA広報通信6月号

介護者メンタルケア協会代表●橋中今日子

 

 

 「介護=同居」「同居=親孝行」という考えが根強くあります。多くの方が、同居していないと親不孝だと感じ、介護が始まる前から過剰な責任感を抱えています。認知症の祖母、重度身体介護の母、知的障害の弟の3人を、1人で20年以上介護してきた私は、これまで延べ1800件を超える介護相談にお答えしてきました。その私が必ずお伝えしているのが、同居だけが理想的な介護ではないということです。

 

誰のための同居か

 介護は同居の方が良いと思われがちですが、家族が同居していると掃除などの生活支援サービスが利用できないケースがあります。また、介護者のペースに合わせざるを得ない同居介護では、要介護者が自分のペースで暮らせないことがあります。私も、かつては在宅介護にこだわっていました。しかし、怒りっぽかった祖母が施設入居後に穏やかになり、体調も良くなった姿を見てハッとしました。仕事と介護で疲弊して余裕を失った私の態度や、週5回通っていたデイサービスが、祖母の負担になっていたのです。
 年末年始などで親族が集まるのはにぎやかでうれしいものの、後でどっと疲れて寝込んでしまった経験は誰もがあるでしょう。離れて暮らすからこそ、良い関係を保ち続けることができ、自分のペースで自立した生活を守れることもあるのです。

 複数の選択肢を考慮して

 「同居しなければ親不孝だから」と、仕事や自分のプライベートを犠牲にした上で成り立つ介護は、必ず破綻します。いずれ同居する、実家近くに移り住むなどの選択をするにしても、往診や訪問看護・介護サービス、宅食や見守りサービスなどがあるかといった情報を集めることから始めてください。「同居しなければならないのか?」と悩んだときは、まずはケアマネジャーや主治医など、専門家のアドバイスを受け、同居以外の選択肢もたくさんあることに意識を向けていきましょう。