ほっと一息

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2022.06.14

介護ハンドブック 介護の大変さを分かってもらえない!

JA広報通信5月号

介護者メンタルケア協会代表●橋中今日子

 

 

 介護のトラブルは深夜や早朝に起きやすく、その苦労が見えにくいものです。介護者の多くが「分かってもらえない」と孤独を抱えています。

状況ではなく要望を伝える

 認知症の夫を介護しているYさんの事例です。夫の認知症が進み、夜中に廊下で用を足すようになりました。夫がトイレに起きる気配を感じると飛び起きて誘導するため、Yさんは寝不足でヘトヘトです。ケアマネジャーは、Yさんが訴える介護状況を傾聴してはくれるのですが、生活が変わるわけではありません。

 多くの介護者は介護の大変さを伝えるために出来事を詳細に話します。そのため、面談時間を状況報告だけに費やし、「愚痴を吐き出したいんだな」と誤解されてしまうことがあるのです。分かってもらわないといけないのは状況ではなく「要望」です。

 

 

「もう無理」と言っていい

 要望を伝えるといっても、日々の介護に追われていると、何をどう伝えればいいのか考えられなくなります。そんなときは「もう頑張れない」「つらい」「苦しい」と伝えてみてください。Yさんの場合は、「来月も同じサービスでいいですか?」と言われた瞬間、「もう無理です、気が狂いそう!」と叫んだことが転機になりました。ケアマネジャーから緊急ショートステイの提案があり、Yさんはようやく休息を取ることができたそうです。

 

 レスパイト(介護家族支援短期)入院や緊急ショートステイなどの制度はあるものの、日常的に気軽に利用できる介護者サポート制度はまだ整っていません。しかし、介護殺人、心中事件が増え続けている今、介護者それぞれに合ったサポートが必要です。介護者自身はもちろんのこと、周囲につらそうな家族介護者がいたら、地域包括支援センターや市区町村窓口に相談するよう声かけしてください。