ほっと一息
2022.06.02
お米をおいしく楽しもう 注目したい「お米のスペック」
JA広報通信5月号
五ツ星お米マイスター●小池理雄
前回、「私にぴったりのお米」に出合うには、さまざまなお米を試すこと、という話をしました。しかし、さまざまなお米を試すとしても、お米の特徴が見えなければ選びようがありません。その特徴を私は「お米のスペック」と呼んでいます。
「お米のスペック」は、消費者が最初から気にする情報ではありません。消費者が思い付くのは、目の前のお米が自分の好みなのかどうかです。しかしそれは食べなければ分かりません。消費者が実際に食べなくとも選べる材料、すなわちスペックを、生産者は売り場や米袋にちりばめなければならないのです。そのスペックとは次の10個です。
(1)農薬の使用状況はどうか。
(2)生産者の顔(栽培におけるポリシー)が見えるか。
(3)栽培における一工夫はあるか。
(4)産地の様子(水・土・風・気温差など)。
(5)ジャケット(米袋のデザイン)。
(6)人や社会、環境や地球に優しく配慮しているか。
(7)3合・4合レベルまで小分けしているか。
(8)品種が持つストーリー(品種名の由来、開発のエピソードなど)があるか。
(9)どのような味なのか。
(10)どのような料理に合うのか。
これらを見ることで、消費者は食べなくとも、品種名や値段以外の「お米を選ぶ材料」を手にするのです。
例えば、玄米を食べる人は品種ではなく、無農薬であることが絶対条件です。子連れの親御さんであれば、子どもの好きな動物が描かれたパッケージを選びます。プレミアム感を抱く言葉……、「突然変異」「きれいな水」「変わった肥料」などに引かれる人もいます。たくさんの品種を楽しみたい人は小分けのお米に手を伸ばすでしょう。
いかがでしょうか? 前回触れた「米粒の色や形」や「精米時期」は差が見えにくい要素でした。だからこそ、お米のスペックが他のお米との強烈な差別化につながるのです。
五ツ星お米マイスター 小池 理雄(こいけ ただお)
小池精米店三代目店主。1971年東京・原宿生まれ。大学卒業後、出版社、人事制度コンサルティングファームなどを経て、2006年に小池精米店を継ぐ。それまでの社会経験を生かし、新しいお米屋さんのあり方を常に模索している。