ほっと一息
2022.05.22
資産管理の法律ガイド 売買について その24
JA広報通信5月号
JA全中・JAまちづくり情報センター 顧問弁護士●草薙一郎
今回は売買契約の契約日についての説明をします。
売買契約の契約日は一般的には契約書を作成した日だと思いますが、作成日より前の日を契約日とするケースも例外的にあるようです。
売買契約は、民法では書面の作成が成立要件となってはいません。売ります、買います、の意思表示の合致があれば、売買契約としては成立します。
そのため、過去にさかのぼって、あの日に契約をしたことにしようと売買当事者間で合意をすれば、売買契約は、そのさかのぼった日をもって成立したことになります。
ただ、こうすることで当事者以外の利害関係者とトラブルにならないかについては注意をするべきです。
ところで、売買契約をした後、代金支払いや登記の移転手続きに時間がかかることもあります。一般の取引でも契約をした後少し日を空けての決済になることが多いようです。農地などのときには役所への届け出や許可などに時間がかかります。
こういう場合、契約当事者が高齢なときに決済時の判断力に問題が生じてしまうケースがあります。登記申請をするに当たり判断力に問題があると、司法書士らは登記申請の依頼を受けることはなく、そうなると、売り主として移転登記ができなくなり、売り主の債務不履行責任が発生してしまうことになります。
登記手続きは司法書士以外でも代理して申請は可能ですが、判断力に問題がある人からの依頼ですので、本来は代理申請は法的に問題のある行為となります。
契約当事者が高齢の場合には、契約日と決済日はできるだけ近い日に設定できるようにしましょう。
次回から、2021年4月の民事に関する法改正について説明します。