ほっと一息

ほっと一息

2022.05.02

私の食育日記 野菜の細胞を壊してみよう

JA広報通信4月号

食育インストラクター●岡村麻純

 

 

 最近息子が、気軽に料理を手伝ってくれるようになりました。お手伝いをしてくれるといっても目が離せず、散らかし放題で逆に時間がかかる幼児期と違って、小学生のお手伝いは本当に時短になって助かります。息子は以前、タマネギを切って涙が止まらなくなる経験をしてから、まず「タマネギも切る?」と聞いてきます。切ることを伝えると、水泳用ゴーグルを着けて登場。いつも笑ってしまいます。

 

 そもそもどうしてタマネギを切ると涙が出るのでしょうか。切ることで細胞が壊され、辛味成分にタマネギが持つ酵素の力が働き、涙を出す成分を放つからです。この辛味成分は、消化を助けたり、血液をさらさらにしてくれたり、本当は体に優しい成分です。タマネギ以外にも、ニンニクやネギ類にも含まれていて、ニンニクは刻んで細胞を壊すほど、香りが強くなります。

 細胞を壊すといえば、あるとき、私が、ミニトマトを野菜室へ入れたつもりが、一つ上の段の冷凍室に入れてしまいました。それに気付いた子どもが「ママ、間違えてるよ!」と野菜室へ戻してくれたのですが、解凍された頃にのぞくと、ミニトマトはぐちゃぐちゃに。それを見て「大変、トマトがもう傷んでいる」と子どもたち。そこで、冷凍すると細胞壁が壊れてしまうので、解凍しても元には戻らないことを説明しました。「もう食べられないの?」と悲しそうな2人に、崩れたミニトマトの皮をむいて、スープを作りました。細胞が壊れたトマトは、加熱するとすぐにスープとなじむので、生のトマトより加熱料理には使いやすいのです。他にも、ダイコンも余ったときに冷凍して細胞を壊しておくと、煮物にするとき短時間で中まで味が染みます。

 子どもたちは「細胞を壊して、良いこともあるんだね」と納得していました。

 

 

 

岡村 麻純(おかむら ますみ)

 1984年7月31日生まれ。お茶の水女子大学卒。大学で4年間食物科学を学び、食生活アドバイザーなどの資格を持つ。
公式ブログ:https://ameblo.jp/masumiokamura/