ほっと一息

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2022.04.23

資産管理の法律ガイド 売買について その23

JA広報通信3月号

JA全中・JAまちづくり情報センター 顧問弁護士●草薙一郎

 

 今回は売買の対象となる土地に、人が嫌悪する事実があった場合について説明します。

 このような場合は、前回説明した「引き渡された目的物(土地)が品質に関して契約の目的に適合しない場合」といえますので、買い主による代金減額や契約解除の問題に発展します。

 人が嫌悪する事実とは、土地に遺体があった、その場所で殺人行為があった、反社会的勢力の事務所があるなどです。これらの事実の有無について、売り主は買い主に告知しておかないと、前述の代金減額や解除の問題に発展します。買い主がこれらのことを知って取引する場合には、一般的には解除などの問題は生じないでしょう。

 従って、取引に当たっては対象土地(建物も同様)について、これらの事実を確認し、買い主に告知することを忘れないようにしてください。

 昔に殺人行為があった土地だとか、過去に災害が発生して死亡事案が生じた土地だという場合、何年くらい前までのことを告知するべきかについては、裁判所は一律に期間を決めているわけではありません。個別に判断されます。過去の判例の中で、建物売買では、母屋ではなく物置で自死があった事例で、約7年前の事実ではあるが告知が必要とされたものがあります。購入した目的物の使用用途なども考慮して判断されているようです。

 

 また、借地上の建物内で犯罪行為による死亡者が出た後、その建物がなくなってから土地を売却しても、買い主がその土地をマイホーム目的で購入したときには、土地について瑕疵(かし)があるとされた事例もあります。

 次回は契約日について説明します。