ほっと一息

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2022.03.02

お米と日本人 ちらしずし

JA広報通信2月号

伝承料理研究家●奥村彪生

 

 

 春の彩りの演出、なぜすしはごちそうなのでしょうか。

 わが国で「ひいな」と呼ばれる紙製の人形が作られたのは平安時代。この「ひいな」に美しい衣裳を着せて飾り、いろいろなお供え物をして見せ合う遊びである「ひいな合せ」が宮中の女官たちの間で競われました。これがひな飾(祭)の始まりです。

 初めは旧暦3月最初の巳(み)の日に行われていましたが、江戸時代になって3月3日に固定されました。内裏びなと共にひし餅や本膳、二の膳なども供えられていましたが、後者は将来嫁ぐ娘らに質素倹約を教えるためでした。ところが明治維新で近代化すると、女としてどうあるべきかと情操教育へと変容してしまいました。

 ところで皆さん、ひな祭りのごちそうは何でしょうか。たいていはちらし(五目、あるいはまぜ)ずしに貝料理です。なぜ、これらを用いるのでしょう。その第一の理由はちらしずしのトッピングはまるで春らんまんの風景を表現しているからです。錦糸卵の黄、紅しょうがの赤、キヌサヤの千切りやフキ、ワラビの緑などまさに春の彩り。この明るさに娘の成長を託しているのです。

 それともう一つ。明治維新で近代化された世の中であっても、日本の農山漁村は江戸時代同様に普段は雑穀を白米に多量にまぜて炊いた糅(かて)飯でした。昭和の戦後しばらくもそう。すし飯は白米100%(例外あり)で作るからごちそうでした。

 貝は家持ちですね。その上、貝偏の字はお金に関係する文字が実に多くあります。「入るを量りて出ずるを為す(制す)」(入るを量って出るを制せば財を成し、ばらまけば貧する)の例えの通り、家計を切り盛りする多くの主婦のご苦労は大変。わが娘の将来の幸せを願って一生金に困らないようにと祈る母心で貝を料理して食膳にのせたのです。料理もまた切り盛りする意味なのです。