ほっと一息

ほっと一息

2022.01.06

ストレスと向き合う マインドフルネス入門

JA広報通信1月号

 

不安やイライラ、心の疲れなどのストレスを自分で和らげる方法として、
近年注目されている「マインドフルネス」。いったいどんなやり方なのでしょう?
初心者でも普段の生活の中で簡単にできる、入門編を伝授!

 

「マインドフルネス」とは?

 

 私たちはいつも過去や未来のことを考えて生きています。数カ月や数年先への不安や期待、過ぎた出来事への後悔や怒り……。もちろん過去の反省や今後への計画性が大切なのも確かです。けれどもそれにとらわれ過ぎるとストレスに結び付きます。不安や悩みや悲しみ、怒りなどネガティブな感情に引っ張られると、気分も落ち込み、自分や家族に対して今すべきことにも気付きにくくなってしまうのです。

 マインドフルネスは「今のこの瞬間」に心を向ける瞑想(めいそう)法です。自分の「今」に集中することで、ネガティブな思いから離れ、気持ちも落ち着きやすくなります。

 

 

五感を使って「今」に集中

 

 「今」に気付くには体の五感をフルに活用していきます。

 難しい技は不要。例えば深呼吸をして鼻を通る空気の流れに集中し、鼻腔に生じる感覚をじっくり感じ取ると、深呼吸瞑想と呼ばれるマインドフルネス瞑想になります。食事のときも、食べ物の色や形をじっくり眺め、香りをゆっくり嗅ぎ、口の中に入れたときの触覚や味覚、噛むことによる変化などをじっくり感じ取ると、食べる瞑想となります。

 いつものストレッチやウオーキング、入浴などでも同様。現在の現象を感じている五感に心を集中させると、過去や未来に飛び回る心を「今ここ」に戻すことができ、心の安定に繋がっていきます。

 

 

 

心のトレーニング効果も実証

 

 このように一つの対象に心を向ける瞑想法はサマタ瞑想といいます。一方、あぐらを組んでひたすら息の流れを感じるヴィパッサナー瞑想という瞑想法もあります。

 どちらもお釈迦(しゃか)様が生み出した、全ての人々が苦しみを滅して幸せに生きる方法「八正道」がルーツ。欧米では1980年代から心のトレーニング法として注目され、医学的・科学的効果も実証された今は世界に広まっています。

 まずは短時間で気軽にできるサマタ瞑想、ぜひお試しを!

 

ヴィパッサナー瞑想では、あぐらを組み静かに呼吸に意識を向ける。雑念が生じても繰り返し呼吸に意識を戻すことで、心と向き合うことにつながっていく

 

 

 

忙しい人にお勧めの「マインドフルネス瞑想」

 

深呼吸瞑想(腹式)

 

新鮮な空気を取り込み体を穏やかに覚醒させる
瞑想法。不安や緊張を感じるときにも。

 

(1)太陽光の入る窓辺などで、朝の新鮮な空気の中で行うのがお勧め。両足を肩幅程度に開いて立ち、おへそから下腹部にかけて手のひらを当て、おなかがへこむのを感じ取りながらゆっくりしっかりと息を吐き出す。

 

(2)鼻からゆっくり息を吸い、おなかを膨らませる。おなかが風船のように膨らみ切ったのを手のひらで感じたら、いったん息を止め、おなかをへこませながら口から細く長く息を吐き出す。

 

 

(3)息の通り道、周囲の匂い、空気の温度などにも意識を向けながら3回以上繰り返す。

 

 

 

ボディースキャン瞑想

 

体の隅々の感覚に意識を向ける瞑想法。
時間があるときに、じっくり行うのがお勧め。

 

(1)自然な呼吸をしながら、太陽の光が頭頂から入ってくる感じをイメージする。夜に行う場合は、照明からの光をイメージしてもOK。

 

 

(2)頭、目、鼻、耳、首、腕、手の指先へと、順に光でくまなく照らしスキャンするイメージで、それぞれに生じている感覚をじっくりと、感じ取っていく。時間があれば胸、おなか、背中、下肢、足の指へと順々にスキャンしていく。

 

 

 

笑顔ストレッチ瞑想

 

朝、時間がないときでも
洗顔ついでにできる瞑想方法。

 

(1)2、3回の深呼吸の後、鏡を見ながら「口角を上げます」「目を細めます」と心の中でつぶやき、ゆっくりと満面の笑顔を作っていく。

 

(2)筋肉の動きを意識しつつ、最高の笑顔を作ったら2、3秒間キープしてから「顔を緩めます」とつぶやき、ほどく。これを数回繰り返す。笑顔で気持ちをポジティブにする効果も期待できる。

 

 

ストレッチ瞑想(肩回し)

 

肩・首の凝りを取りつつ、瞑想で心も穏やかに。

 

(1)背筋を伸ばしていすに座り、おへその両脇に手のひらを当て、おなかをへこませたり膨らませたりの腹式呼吸を数回行う。

 

 

(2)右手は右肩、左手は左肩の先端をそっとつかみ、心の中で「右肩を回します」と言って肘で大きく円を描くようゆっくりと外回しする。関節や筋肉の動きをしっかり感じながら5~10回程度回し、ほぐれた感覚になったら左肩も同様に。

 

 

(3)続いて両肩を同時に5~10回ほど外回し。「終わります」と心で言って静かに終える。

 

 

☆POINT

肩が外に向かうときは息を吸い、
戻すときは大きく吐くよう意識。

 

 

奥田弘美


精神科医・日本マインドフルネス普及協会代表理事
都内で精神科医・産業医として老若男女のメンタルケアに携わるかたわら、仲間とともにマインドフルネス瞑想を広める活動を行っている。著書に『一分間どこでもマインドフルネス』(日本能率協会マネジメントセンター)、『うまいこと老いる生き方』(すばる舎)など多数。