ほっと一息

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2021.11.21

ストップ! 農作業事故 畜産関係の事故

JA広報通信11月号

人間工学専門家●石川文武

 

 

 家畜による農作業死亡事故件数は、大きく取り上げられることは少ないのですが、北海道では過去10年の負傷事故約2万3000件のうち、家畜との接触による事故が36%で、農業機械による負傷事故を上回っており、大きな問題となっています。畜産の盛んな地区では同様の状態といえます。

 酪農のつなぎ飼いでは搾乳作業時、フリーストール/フリーバーンでは牛の移動時に事故が頻発しています。肉牛肥育でも牛の移動時や牛がいる場所に作業者が入ったときの事故が見られます。いずれも牛に蹴られる、踏まれる、柵などと牛との間に挟まれる、頭突きされるなどがあり、骨折や靱帯(じんたい)断裂などの重傷を負って長期入院となる事例もあります。牛の死角から近づかない、牛を驚かせないよう大きな声や音を出さない、近づくときは声を掛けたり、牛体に触れて人の存在を認識させたりする、逃げ場がない場所に立たない、待機場やパドックなど牛が自由に動ける場所には1人で立ち入らない、牛が暴れる可能性があるときは固定物に確実に保定する、といった注意点を守る必要があります。これらは従来から畜産農家に呼び掛けられていますが、牛が人間にとって危険な行動を示すのには理由があり、そのリスクを取り除かなければ、事故の可能性はゼロになりません。牛の危険行動はストレスが原因の一つといわれており、作業者の接し方・牛の居住スペース・清潔度・温湿度・餌の質と量の適正さ、疾病や発情の有無、他の牛との関係性などが要因として挙げられます。例えば、搾乳時に大きな声や音を出したり、忙しいからといって手荒な作業をしたり、牛の周りを気ぜわしく動き回ることも牛へのストレスになります。


 発情した牛は人間に対しても突発的な行動を取ることがあり、危険です。日頃から牛をよく観察し、ストレスや疾病兆候の有無、発情をいち早く発見することで、牛に接近する際に十分な警戒態勢を確保できるとともに、疾病の早期治療や適期の人工授精を行うことができます。