ほっと一息

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2021.10.11

資産管理の法律ガイド 売買について その17

JA広報通信9月号

JA全中・JAまちづくり情報センター 顧問弁護士●草薙一郎

 

 

 今回は登記簿謄本に仮処分の登記が付いている物件の売買について説明します。

 仮処分登記とは、土地建物の場合、その土地建物の所有権などを保全するために裁判所の決定を得て登記をするケースを指します。

 例えば、売買をして代金を支払ったのに相手が自分に登記を移してくれないときに、相手の登記に対して所有権移転登記請求権を保全するために、処分禁止の仮処分を付けるケースです。買い主は売り主である相手に、代金を支払ったのだから所有権の移転登記をせよと請求する権利を持っており、もし、売り主が任意に登記を移転しないときは、裁判で判決を得て登記を移転することができます。

 しかし、その登記の前に売り主が第三者に二重譲渡して登記を移転してしまうと、初めの買い主は後の買い主に所有権を対抗することができません。

 そこで、裁判を提起する前に売り主に対して、その物件の所有権譲渡や担保設定などの処分をしてはならないとの仮処分の申し立てを行います。裁判所の決定を得て、その物件に処分禁止の仮処分の登記を付け、所有権移転登記の権利を保全するのです。この仮処分の登記の後、相手方である売り主が第三者に譲渡しても、仮処分の後申し立てた訴訟で買い主が勝訴すれば、買い主は第三者に対して自分に所有権移転を求める権利があることを主張できることになります。

 

 このように、仮処分の付いた物件は売買ができないわけではありませんが、仮処分の申し立てをした者はその物件自体を必要としていますので、売買をしても買い主は物件を取得できる可能性は低いことになります。その意味で、このような物件は売買には適しません。
 次回は、その他の登記が付いているケースの説明をします。