ほっと一息

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2021.10.05

介護ハンドブック 介護者がサービスの利用を拒むケース

JA広報通信9月号

介護者メンタルケア協会代表●橋中今日子

 

 

 介護者がサービスの利用を拒むケースがあります。男性の主介護者がサービスを拒み、見かねた家族から相談が寄せられることが多いです。男性介護者は「他人に頼らず自分で解決する」ことが美徳とされる社会で生き抜いてきた方ばかり。他者の協力を得る経験そのものが少ないのですから、当然のことでしょう。

 

 「本当の困り事」は見えにくい

 大手メーカー管理職のBさん(50代男性)の事例です。「父(80歳)が、認知症の母(75歳)を実家で介護しています。母の世話は自分一人で大丈夫だと言い張り、要介護認定の申請を説得するのに3年かかりました。その後も、宅食などの保険外サービスは利用していますが、介護保険サービスは拒否し続けています」。

 この場合、キーパーソンはケアマネジャーのCさんでした。様子を見に来たCさんが「今日は少しお疲れのようですが、何かありましたか?」と父親に尋ねると、「夜中まで薬を整理していてね……」と語ったそうです。父親は、夫婦合わせて4カ所から処方される小さな錠剤やカプセルを、通院のたびに自分で丁寧に仕分けしていたのです。Cさんは「薬剤師さんが薬を整理してくれますよ」と薬剤師訪問サービスの利用を勧めました。

 

小さな信頼を積み上げる

 疲れ果てた父親は「話だけ聞いてみよう」と提案を受け入れました。薬剤師は主治医と薬局と連携して薬の種類を減らし、朝昼晩と1回分ずつパックにまとめる指示を出してくれたのです。小さな薬の仕分けから解放された父親は「専門家は頼もしいな!」と感激。その後「デイサービスに行くと活動量が多くなって、足腰にいいんですよ!」とCさんから勧められ、母親のデイサービスの利用を前向きに検討し始めました。

 Cさんの提案を父親が受け入れたのは、頻繁に顔を見せて関係性を深め、本当に困っているタイミングで手を差し伸べたからでしょう。説得したい気持ちは少し横に置いて、本人が訴えていない困り事を探してみるのも一案です。