ほっと一息

ほっと一息

2021.09.12

介護ハンドブック   本人がサービスの利用を嫌がります

JA広報通信8月号

介護者メンタルケア協会代表●橋中今日子

 

 

 私に寄せられる相談で特に多いのが「本人が介護保険サービスを嫌がる」という内容です。先日も、女性会社員のTさん(40代)から「祖母を介護する母が心配です」との相談が入りました。

 Tさんの実家は商店を営んでいて、創業者の祖母は90歳を超えても経営に携わっていました。ところが、祖母は3週間前に尻もちをつき、脊柱圧迫骨折したのです。痛みで寝返りも打てないほどで、入院を勧められましたが「家で治す!」と聞きません。家族が支えればトイレに行けるようになりましたが、仕事をしながら介護する母親が疲れ切っています。Tさんは介護保険の申請を提案しましたが、祖母は「必要ない!」と突っぱねるのだそうです。

 

■ 本人の価値観に寄り添う

 介護サービスへの拒絶は、不安からの抵抗がほとんどです。自立心が高い方ほど「人や物に頼ったら、このまま弱ってしまうのでは」と、不安を感じるものです。私はTさんに、祖母が大切にしている考え方(価値観)は何か尋ねてみました。Tさんは、長年商売に携わってきた祖母が「損する」という言葉に敏感なことを思い出し、こう伝えてみました。「介護保険料って、使わなくても保険料を払わないといけないんだよ。使えるものを使わないって損じゃない?」。すると、祖母の表情が少し緩みました。さらに「リハビリもお得に受けられるんだって」と価値観に響くメリットを伝え続けたところ、「それなら、使わない手はないか」と、介護保険の申請を承諾してもらえたそうです。

 

■ 体験から納得感を増やしていく

 Tさんはその後「祖母は、レンタルの介護ベッドが快適で、訪問リハビリのスタッフとの交流も刺激になり『介護保険を使って良かった!』と喜んでいます」と話します。実際に体験することで気持ちが変化することもあります。諦めずメリットを伝え続けてみてくださいね。