ほっと一息

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2021.09.05

天気予報で季節を感じよう 気象用語の 風物詩

JA広報通信8月号

イラスト:MDRデザイン事務所

 

 

天気予報のない大昔から、人々は季節ごとの天気の変化を伝えるさまざまな言葉を生み出し後世につないできました。これらの言葉を四季折々の風物詩、私たちの文化的な遺産であると考えると、少々硬い言葉でも愛着が湧いてくるのではないでしょうか。現在の天気予報でも使われる気象用語から、季節を感じてみませんか。

 

 

春編

うぐいすの初鳴日

 「春告鳥(はるつげどり)」とも呼ばれるウグイスは、山里に春の訪れを知らせる鳥として親しまれています。西日本など温暖な土地では、2月中に初鳴きを観測することが多いようです。生物季節観測の大幅縮小に伴い、2021年から初鳴日は観測されなくなりました。

 

 

あいの風

 日本海の沿岸に吹く、北~東寄りの風を指します。江戸時代、蝦夷地(北海道)から大坂(大阪)に向かう北前船には追い風(順風)となったため、幸運の風として好まれたといいます。春から夏にかけて、日本海に高気圧が進んでくると吹きやすくなります。

 

 

春雷(しゅんらい)

 春の到来を告げる雷。冬眠している地中の虫を起こすとして、「虫出しの雷」とも呼ばれます。主に寒冷前線が通過する際に発生しますが、天気の急変や落雷、突風、ひょうを伴うことがあるので油断できません。

 

 

 

夏編

 

腐草為蛍(くされたるくさほたるとなる)

 七十二候(しちじゅうにこう)の一つ。昔は腐った草が、ホタルになると思われていました。ホタルが多く出るのは、ちょうど梅雨入りと重なります。梅雨は「黴雨」とも書きますが、まさに黴(かび)が生じる時期でもあります。

 

 

チンダル現象

 大気中に細かい粒子があると、真っすぐ進んできた光がいろいろな方向に反射するため光の筋が見えます。この現象により、雲の切れ間から漏れた太陽光が扇状に見えるのは「光芒(こうぼう)」と呼ばれ、神々しい現象の一つとされています。

 

 

猛暑日

 最高気温35度以上の日は、かつて正式な呼び名がなく「酷暑日」などと表現していました。しかし、記録が次々と塗り替えられる中、いよいよ高温への注意喚起が必要となり、2007年の予報用語改正で「熱中症」と共に新たに追加されました。

 

 

 

秋編

 

彩雲

 太陽の近くを通る雲が、赤や緑など鮮やかに彩られる現象。「慶雲」や「瑞雲(ずいうん)」などとも呼ばれ、昔から縁起が良いとされますが、これは見た目の美しさによるところが大きいと考えられます。実際は特別珍しいといえるほどの現象ではありません。

 

 

玄鳥去(つばめさる)

 七十二候の一つで9月17日ごろ。子育てを終えたツバメが南へ渡っていく時期に当たります。農薬がなかった時代、ツバメは稲の害虫を食べてくれる大切な存在でした。また、人家の軒下に巣を作ることで、落雷や火事を防ぐとされました。

 

 

秋雨

 夏の終わりから10月初めころに、曇りや雨の日が続くことがあります。梅雨ほどはっきりしてはいませんが、南岸沿いに秋雨前線が現れることがあり、台風の接近と重なった場合は記録的な大雨となることがあるため注意が必要です。

 

 

冬編

 

雪つり

 雪の重さで樹木の枝が折れないよう、縄や針金で枝をつっておくこと。傘のような形になるものが多いようです。湿った重たい雪が降る北陸で効果的ですが、最近では雪の少ない太平洋側の日本庭園などでも目にする機会が増えました。

 

 

熊蟄穴(くまあなにこもる)

 七十二候の一つ。12月半ばあたり、熊は冬眠の前に大量の食物を必要としますが、人里まで下りて人と遭遇するケースが増えています。また、近年は冬眠できない「不眠熊」が冬場に現れることがあり、暖冬が一因ではないかといわれています。

 

 

けあらし

 漢字では「気嵐」と書きます。海などの水面から霧が立ち上る現象で、気象用語では「蒸気霧」といい、気温が下がる早朝に多く発生します。主に北日本や東日本北部など寒い地方で見られ、けあらしの観光スポットとして有名な場所もあります。

 

 

 

気象予報士 森田正光さん (ウェザーマップ)

1950年愛知県名古屋市生まれ。財団法人日本気象協会を経て1992年、全国初のフリーお天気キャスターとなり、気象予報会社・株式会社ウェザーマップを設立。親しみやすいキャラクターと個性的な気象解説で人気を集め、テレビやラジオなど多方面で活躍中。